ある戦いの記録

俺はくらげさん。
しがないサラリーマン一人暮らし。
今日は俺のとある戦いの記録をここに記そう。


そう、あれはある日の夜だった。
いつものようにトイレの水を流した時の事。
水かさが通常よりも明らかに増すのだ。
ありえないんだそんな事は。
今にもあふれんばかりに恵みの水を湛えた便器。
水不足に喘ぐ砂漠の民はきっと天に感謝する事だろう。
だがしかし、俺は江戸っ子、水にはとりあえず困っちゃいねぇ。
そんな恵みはノーサンキュー!!
すぐに直したいところではあるが
あいにく道具もないし、深夜じゃどうしようもない。
そこで俺はこの絶体絶命のピンチを切り抜ける為に
ありったけの知恵を絞って考えた。
トイレが詰まる原因で多いのは本来流してはいけないものを
流してしまうか、紙が詰まってしまうかがほとんどだ。
俺は変なもの流してないので紙が詰まったで間違いない!
紙が詰まったのなら時間がたてば水に溶けて治る事があるらしい。
よし、こうなったら牛歩戦術だ。
幸いトイレは完全に詰まってなく
数分かけて少しづつ水かさは減っていく。
何もわざわざ苦労しなくても待っていればどうにかなるさ
そう思いかけていた時、突然稲妻に撃たれた様な衝撃と共に
忘れかけていた大切な何かに俺は気がついた。
例えるならば若かりし頃の情熱とでも言おうか。
そう、ただ待ってるだけじゃ明るい未来はやってこない!
いつだって挑戦し、諦めなかった奴だけが
その手に栄光を掴むんだ!!
今こそ立ち上がれ、俺!!


作戦その1
サンポール投入
サンポールはトイレ掃除用洗浄液剤だが
成分に塩酸を含むのが特徴だ。
「酸の力で汚れを落とす」
これがサンポールのキャッチフレーズだ。
酸ならばただの水よりも紙を溶かす力は強い。
これを投入すればきっと効果があるに違いない!


結果、5時間あまりの長期戦の末
十分な効果を得られなかった事を確認。
本作戦を終了する。


ちくしょう、なんて事だ!
サンポールをもってしてもかなわないとは・・・
なんとなくだらだらしているうちに
テレビでは笑っていいとも流れ始めちゃってるし
仕方ない、本当はこれだけはしたくなかったんだが・・・


作戦その2
最終兵器投入
俺は部屋を飛び出し愛車に飛び乗って
近所のホームセンターを目指した。
ここは食品から建材まで何でもそろう場所。
家一軒建てる事さえも容易い。
そう、ここに来れば全てが手に入る!!
ここに買いに来たのは他でもない
最終兵器だっ・・・!!
できる事なら、これだけは使いたくなかった・・・
その破壊力(インパクト)は他の追随を許さず。
完全無欠!!絶対無比!!
恐るべき悪魔の矛!!
俺は目当ての物を手に入れ
大急ぎで部屋へと引き返す。
最近自転車で坂を上るのが辛い、歳か・・・
そしてついに決戦の時。
ククク、忌々しいトイレめ
今までよくも好き勝手してくれたな!!
だがそれもここまでだ!
この最終兵器の前ではいかに貴様といえども敗北は必至!!
そう、今からこのラバーカップでかっぽんかっぽんしてくれる!!
さぁ、食らうがいい!!
うをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
かっぽんかっぽんかっぽんかっぽん!!
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!!
かっぽんかっぽんかっぽんかっぽん!!

はぁ・・・はぁ・・・
やった・・・ついにやったぜ!!
俺は勝ったんだ・・・!!
ついに長かった死闘に終止符が打たれた。
こうして第一次トイレ大戦は14時間もの長期戦の末
俺の勝利により幕を閉じた。


         「江戸っ子神話・くらげ戦記-第3章-より抜粋」